今さら聞けない?ラジカル制御形塗料とは
外壁塗装・屋根塗装は家の外観を綺麗にするだけでなく、家の保護する目的や防水・遮熱・防藻・防カビなどの機能を付与することもできます。
外壁塗装・屋根塗装を検討していく中で、ラジカル制御形塗料という言葉をよく聞くことになると思います。今回は、ラジカル制御形塗料とはどういうものなのか、何が良いのかを解説していきます。
塗料の耐候性とは
塗料を選択する上で、次の塗り替えまでどれくらいもたせるかが重要なポイントの一つですが、その目安となるのが塗料の耐候性です。耐候性とは、塗膜がどれくらいもつのかを示すものであり、耐候性を次の塗り替えの目安にしたものが、期待耐用年数といいます。
塗料の耐候性を計測する方法は実際に屋外に曝露して経過観察することはもちろんですが、それだけでは製品開発に数十年単位で時間を要するため、人工的に塗膜にダメージを与えてその劣化具合から判定します。
耐候性の試験方法
単に述べると、太陽光よりも強い紫外線を発する機材で照射をしたり、高温・低温下に交互に晒すなどで短期間で数十年分のダメージを与える試験を行っています。
各塗料メーカーさんによって判定の仕方や考え方は様々で一概に各社の塗料を耐候性のデータだけで比較は難しく、また、あくまで試験上での結果であり、家の構造や基材(下地)の状態によって大きく左右されるため絶対ではないことを理解してください。
樹脂のランク
塗料は樹脂、顔料、溶媒、添加物によって形成され、塗料の耐候性は使用される樹脂によって大きく決まってきます。外壁塗装・屋根塗装に使用される樹脂はアクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂です。アクリル以外の樹脂は単体では塗膜として成りえないためアクリルウレタン(ポリウレタン)樹脂やアクリルシリコン樹脂といった表記が厳密にされている場合がありますがシリコン樹脂=アクリルシリコン樹脂のように同義として捉えて大丈夫です。
樹脂同士の結合力がアクリル<ウレタン<シリコン<フッ素の順で高くなります。
この結合力が高いほど太陽光の光エネルギーに長期に耐えられるため耐候性が高くなります。これらを期待耐用年数という次の塗り替えまでの目安で表すと、メーカーや製品ごとに多少の幅はありますが、下記になります。
アクリル樹脂 5~6年
ウレタン樹脂 7~9年
シリコン樹脂 10~12年
フッソ樹脂 16~20年
この期待耐用年数は外壁塗料としての設定であり、より紫外線の影響を受ける屋根塗料では上記よりも低い年数になります。樹脂の結合力が高くなるほど、価格も高くなります。
ラジカルとは
塗料は白色顔料である酸化チタンをベースとして配合し、そこに赤や青などの着色顔料を入れて色を再現していきます。酸化チタンがあることによって、下地の色が透けなく(隠ぺい性)、発色が良くなるため塗料には不可欠な成分となります。
しかし、この酸化チタンに紫外線が当たると“ラジカル”が発生します。このラジカルは樹脂の結合を分解し塗膜の劣化の要因となります。塗料に不可欠な酸化チタンですが、同時に劣化を引き起こす要因でもあるのです。
ラジカル制御形塗料
ラジカルへの対応策として、発生したラジカルを吸収する光安定剤(ハルス)が配合されています。光安定剤ハルスが配合されることで樹脂へのダメージを抑えることができますが、ハルス自体の品質がピンキリあります。菊水化学工業の「キクスイロイヤルシリコン」には、車両や工業製品にも使用されるドイツの樹脂メーカーBASF社製ブランドハルスの“チヌビン”を採用しています。期待耐用年数は同じグレードの他メーカー製品と比較すると高い設定にもなっておりハルスの品質の重要性がわかります。
また、ハルスを塗料に添加(後入れ)している製品と、樹脂の構造内に組み込まれている製品があります。後入れすることは技術的に簡単ですが、経年で流れ落ちてしまい長期的に効果を発揮することができません。専門的にはなりますが、単にハルスを配合しているだけでなく、その品質や効果の持続性が説明されている塗料は信頼性が高いです。
しかし、光安定剤だけでは漏れが出てしまうため2つ目の対応策として、酸化チタンをより細かなケイ酸質等の無機系粒子でコーティングする技術を使用しています。発生したラジカルを外に出さないようにする仕組みです。光安定剤ハルスとの2段階のラジカル対策の結果として耐候性が向上したという仕組みです。
つまり、ラジカル制御形塗料とはシリコンやフッ素などの樹脂ではなく、ラジカル制御形のシリコン塗料やフッ素塗料があるということです。ラジカル制御の技術は樹脂のグレードを上げるよりも低コストでできるため、価格を抑えながらも高耐候性を得ることができます。
ラジカルを活用した光触媒
樹脂の結合を分解し劣化の要因となるラジカルですが、この分解するという効果をプラスに活用したのが光触媒です。付着した汚れや菌を分解することで清潔で綺麗で状態を保てます。トイレのコーティングや空気清浄機に内蔵されていたり、幅広い分野で光触媒は活用されています。建築分野でもサイディングボードにコーティングすることで低汚染性の優れた外壁材が普及されています。塗装材としての光触媒もあり、改修工事でも使用することが可能です。
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