外壁の種類と塗装のポイント
外壁塗装を行う際、なるべく耐久性や性能に優れた塗料を使用した方が良いと思いますよね。
確かに、そうした塗料を使用した方が良いのですが、一点注意が必要です。
一口に外壁塗装といっても、使われている外壁材は様々で、外壁材の種類によっては希望する塗料との相性が悪く、かえって悪影響を及ぼす場合もあるからです。
そこで、このページでは一般的な外壁材の種類・特徴と、それらの塗装に適した塗料をご紹介したいと思います。
1. 窯業(ようぎょう)系サイディングボード
セメント質と繊維質を主原料として、板状に形成した素材です。タイル調、レンガ調などデザインバリエーションが豊富で、現在最も多く使用されていると言われています。
吸水性があり、防水機能は塗膜によって保たれているため、塗膜の劣化を放置すると建物の構造にダメージを与える可能性もあります。
厚み14mmのボードは釘留め、16mm以上のボードは金具留めですが、釘留めの場合は釘が抜けてしまい、ボード自体が浮く可能性もあります。
また、縦横どちらかに約3mおきに「目地」と呼ばれる隙間があります。
この隙間から雨水が浸入しないように、ゴム素材の「シーリング材」と呼ばれる材料が充填されています。このシーリング材も、塗料同様劣化しますので、サイディングボードがメンテナンス時期に来ていたら改修が必要です。窯業系サイディングには、新築時の工法が2種類あり、適切なメンテナンス方法が変わるので注意が必要です。
・直貼り工法の場合
防水紙の上から直接サイディングボードを貼り付ける「直貼り工法」は、以前はポピュラーな工法でしたが、平成21年7月以降新築物件の築後10年以内の雨漏りに関しては必ず保証するように定められてからは、サイディングによる外壁工法は通気工法のみになりました。
この工法の場合、サイディングボードの内側で結露を起こしてしまう「内部結露」と呼ばれる現象が起きやすいため、最善のメンテナンス方法は塗装ではなく張替になりますが、塗装する場合は必ず透湿性の高い塗料を選択しましょう。
・通気工法の場合
防水紙とサイディングボードの間に通気層を確保している通気工法の場合は、基本的に塗装不可の塗料はありませんが、どの程度住まいを長持ちさせたいのか、また屋根や他の外装材の傷み具合に合わせた塗料の選定が必要です。
・傷や剥がれが無い場合
傷や剥がれなどの深刻な傷みがない場合は、新築時の意匠性を保ったまま塗膜を保護できる「クリアー塗装」が可能です。あくまで傷や剥がれがない場合に限定されるので、新築時の意匠が気に入っている場合には、早い段階で外壁の状態をチェックし、メンテナンスを検討しましょう。
住まいの現状は、お客様ご自身で正確に把握するのが難しいので、プロによる診断をおすすめします。
イマガワペイントではお見積りを出させていただく前に、たっぷり時間をかけてお客様の住まいの現状を診断させていただきますので、ご相談ください。
2. 金属サイディングボード
スチールやアルミニウムを使用した金属鋼板の素材です。
デザイン性・耐久性に優れた表面材(金属板)と、断熱性・防火性に優れた裏打材によって形成されており、メンテナンス回数が少ないことが特徴です。
ただし、少しの傷やゴミの蓄積からサビが発生し耐久性を低下させる恐れがあるので、表面材が傷まないように定期的な清掃・塗装メンテナンスが必要になります。
ではどのような点に注意したら金属サイディングボードの寿命を削ることなく長期的に素材を活かすことができるのでしょうか。以下に注意点を上げていきます。
・サビ止め塗料を下塗りに使用
様々な性能で優れている金属サイディングの一番の弱点はサビです。
表面は特殊なメッキ加工がされていますが、中身は鉄の板のようなものなので、メッキが剥がれたところに雨水が当たるとそこからサビが進んでいってしまいます。そのため、サビ止め塗料を下塗りに使用します。
・遮熱・断熱性に優れた塗料を使用
金属の特徴として、熱を持ちやすい性質があります。
裏打材があるので、熱がそのまま伝わっていくことはありませんが、遮熱・断熱性に優れた塗料を使用するのも、金属サイディングのメンテナンス手段の一つです。
3. モルタル
職人さんが現場ごとにセメント質と石灰や砂を混ぜて水で練った素材で、自由性に富み職人さんの塗り方次第で独自の美しい仕上がりになります。
施工が簡単で低コストなため、新築時の吹き付け仕上げ材として最も使用されていました。
強度があり耐火性に優れますが、防水性能が低下すると急激に劣化が進みやすくなり、クラックと呼ばれるヒビ割れなどが発生しやすくなるので、塗装の際はクラックの補修を行う必要があります。モルタルの外壁を塗装する場合には、現状起きているクラックの補修と、今後クラックが発生しないための配慮が重要です。
・クラックがある場合は現状起きているクラックを補修する
「フィラー」と呼ばれる下塗り塗料で、小さなクラックを埋め、凹凸を均した上で塗装を行う必要があります。
・クラックがない場合は予防のため強い塗料を選択する
今後のクラックを発生しにくくするには、下地材の動きに追従できる性質を持った塗料を選ぶ必要があります。「微弾性・高弾性」と呼ばれる性質で、塗膜が伸縮性を持つので、下地材が動いても割れや剥がれが起きにくい塗料になります。
※ザラザラした手触りが特徴の住まいの場合、外壁塗装工事を行うことで、若干滑らかになる可能性があります。その特徴が気に入っている場合は特に、塗装前に業者との打ち合わせを徹底しましょう。
4. ALC
「ALC」とは「Autoclaved Lightweight aerated Concrete(高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)」の頭文字をとって名付けられた建材のことです。
端的にいうとコンクリートを軽量気泡化した外壁材で、コンクリート本来の性質を持ちながら、水に浮くほど軽い性質を持ち、マンションなどに多く見られます。
断熱性・耐火性・耐久性に優れる一方、吸水しやすい性質を持つため、塗膜が劣化したままだと防水性が乏しく、内部からボロボロになっていってしまう恐れがあります。劣化が進み手遅れになると、下地補修から復旧が必要になるため、定期的な点検で適切なメンテナンス時期を逃さないことが重要になります。
また、サイディング同様ボード状の外壁材なので、目地がありますが、サイディングよりも数が多いため、シーリング補修にかかる費用が高額になる可能性があります。吸水しやすい性質を持つALCは、耐候性を塗装に持たせています。そのためALC外壁の塗装は、いかに耐候性に強い塗料を使うかが重要なポイントです。
・透湿性の高い塗料を選択する
ALCの外壁塗装は、パネル内部に溜まっている水分を逃がす一方、外からの雨水を浸入させないことが重要な役割になります。そのため、耐久性だけでなく透湿性の高い塗料の使用がおすすめです。
・高耐久のシーリング材で補修する
目地から雨水が入り込み、内部を劣化させるケースが多いため、シーリング補修が必要です。しかし前述の通りコストが高額になる可能性があるため、一度の改修でしっかり長持ちさせられる耐久性に優れたシーリング材を使用することをおすすめします。